APS-C一眼レフの完成形 EOS 90Dデジタル一眼レフを1ヶ月ほど使ってみた感想など
“APS-C一眼レフの完成形 EOS 90Dデジタル一眼レフが届きました!”の続きです。
“Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 90D” (EOS 90D)を買っておよそ1ヶ月が経過し、その間、2回ほどヒコーキ写真を撮影する機会があったので、その辺りの体験をもとにザックリとした感想をTALKします。なお、今回のTALKでは、”Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 7D Mark II” (EOS 7D Mark II)との比較が中心になることをご容赦下さい。
< 高速撮影の性能について >
“EOS 90D”は光学ファインダー撮影時、最高約10コマ/秒で高速連写ができるのが特徴のひとつになっています。また、連続撮影時の連続撮影可能枚数は約58枚(JPEGラージ/ファイン)、約24枚(RAW)という点も魅力のひとつになっています。一方の”EOS 7D Mark II”は、秒間コマ数は最高約10コマ/秒と同じですが、連続撮影時の連続撮影可能枚数は約1090枚(JPEGラージ/ファイン)、約31枚(RAW)です。
今回は全てRAWで撮影しましたので、連続撮影可能枚数に関してはカタログスペック上、約24枚 vs 約31枚という性能比が気になるポイントになります。ちなみに、”EOS 90D”はSDカード、”EOS 7D Mark II”はCFカードに撮影した写真データを記録しました。
今回、”Miramar Air Show“の会場で初めて”EOS 90D”を使ってみました。
最高約10コマ/秒という連写性能に関しては期待通りでしたが、”EOS 7D Mark II”と比べると、連続撮影可能枚数については正直言って力不足を感じました。体感的には、連続して約24枚 (約2秒間)連続撮影した後、次の連写が可能になるまでのインターバルに想定以上の時間を要していました。連続撮影可能枚数を加味すると、連写性能は”EOS 7D Mark II”の1/3〜1/4程度の能力かなあ、というのが個人的な感想です。
ちなみに、同じヒコーキ写真でも、民間航空機の撮影でしたら”EOS 90D”で不満を感じることはないと思います。
戦闘機の撮影でも、機体の離発着シーンを狙う程度であれば支障はないものの、戦闘機の飛行展示で行われるハイスピードパス等のシーンでは、かなりの力不足を感じました。そういう意味では、レーシングカーの走行シーンや動きが早いスポーツ観戦などでも、相応の力不足を感じるかもしれませんね。
3枚の写真はいずれも”EOS 90D”で撮影したものですが、こうしたシーンを捉えるためには、ギリギリまで粘ってシャッターを切る勇気が必要です。ちなみに、”EOS 7D Mark II”であれば、少し手前のシーンから連写し始めることができるので、フォーカスを含め程よいシャッターチャンスをモノにできるのですが…
“EOS 90D”に限らず、高画素を誇るカメラに関しては、ソニーのような高性能ミラーレスであっても、写真データの書き込み時に生じる待ち時間は、撮影時のストレスになっているようです。”EOS 90D”に着目すると、”EOS 7D Mark II”よりも高画素で撮影した写真データをSDカードに書き込むわけですから、販売価格との折り合いで、どうしても控え目な性能に落ち着かざるを得ないことは承知しています。とは言え、高速連写に関しては、キャノンが宣伝文句にしている”APS-C機の完成形”と実際の性能とは相応の乖離があるように思います。
< 操作性、使い勝手について >
撮影回数は少ないものの、1点を除き、”EOS 90D”の使い勝手に関しては概ね不満に感じる点はありませんでした。
滑走路を離発着するヒコーキを撮影する場合、水平に撮影することは重要なポイントになります。最近は、”Adobe Lightroom“などで撮った写真の角度調整を簡単に行えるので多少の傾きであれば問題ないですが、出来れば撮影時に水平を保っておきたいと思っています。
“EOS 7D Mark II”を使っている時は、ファインダー内に見える水準器が中央に位置していて、しかも上下左右の傾きを直感的に把握できるので、ある程度の速度で移動するヒコーキの撮影であっても水平を確保しやすかったです。
一方、”EOS 90D”のインテリジェントビューファインダー内に配置されている水準器は、左下に小さく表示されていて、しかも傾きを把握しずらい図形になっているので、正直言って、とても使いづらです。もし、ファームウェア等で改良できる部分なら、是非、”EOS 7D Mark II”仕様の水準器を選択できるオプションを追加してほしいと思っています。
< 高速・高性能AF性能について >
今回はワンショットで撮影する機会がなかったので、”EOS 90D”のAF性能に関しては、高速連写時という前提での感想になります。
“EOS 90D”の購入を検討する際、一番気になった点がAFセンサー数です。個人的には、高速で移動する戦闘機の撮影が多いので、”EOS 7D Mark II”の場合はゾーン(9パターン)あるいはラージゾーン(3パターン)のいずれかで撮影していました。”EOS 7D Mark II”はオールクロス65点AFセンサーをサポートしているので、撮影時に不満を感じることは殆どありませんでした。
一方の”EOS 90D”はオールクロス45点AFセンサーということで、”EOS 7D Mark II”よりもAFセンサー数が少ないです。とは言え、”EOS 7D Mark II”と同じようなゾーン選択ができるので、ゾーンAFとラージゾーンAFの両方を使って撮影してみました。
結果から言いますと、”EOS 7D Mark II”と比べ、左右1列分のAFセンサーが足りない分、高速で移動する被写体に追随するには多少の力不足を感じました。ま、高速連写性能ほどではありませんが、左右1列分のAFセンサーがある意味を再認識した次第です。勿論、高速連写性能と同様、民間航空機や離発着時のヒコーキを撮影する分には不満を感じる場面はないと思います。
< 高画質について >
“EOS 90D”はコンシューマなお値段なのに約3250万画素で高画質な写真を撮れるのが魅力のひとつ。勿論、写真は綺麗に撮れるに越したことはないわけですが、ここで着目したいのは写真の保存・管理に関する問題点です。
下の3枚は、macOS Mojave 10.14.6環境のファインダー上で3種類の写真データを表示した例です。
左から順に、”EOS 7D Mark II”、”Canon ミラーレス一眼 カメラ EOS R“(EOS R)、”EOS 90D”です。ご覧の通り、同じ拡張子”.CR3″なのに、”EOS 90D”で撮影した写真データのサムネイルをmacOSのファインダー上で表示できません。これに関しては、macOSのバージョンアップで解消するはずですが、同じ拡張子にも関わらず、ファイル構造が異なるのは、写真を管理する場面ではあまり有り難いこととは言えません。
“Adobe Lightroom“や”Adobe Photoshop“等の写真に特化したアプリでは問題なく表示したりレタッチできるのですが、拡張子”.CR3″の写真ファイルは”Google フォト“や”アマゾン プライムフォト”といったCloudストレージでは非対応なので、写真データをクラウド上にバックアップできません。
続いて、写真データのファイル容量についてです。
“EOS 7D Mark II” (約2020万画素)で撮影したRAWデータのファイル容量は概ね20MB程度。
“EOS R”(約3030万画素)で撮影したRAWデータのファイル容量は概ね30MB程度。
“EOS 90D”(約3250万画素)で撮影したRAWデータのファイル容量は概ね40MB程度。
一見すると、高画質な写真を撮れるカメラの方がアドバンテージが高いと思いがちですが、”EOS 7D Mark II”の2倍近いファイル容量を必要とする”EOS 90D”の写真データの管理に係るコストは、長い目で見ると楽観視できません。有料のクラウドストレージにバックアップする場合は、契約料金に直結するところなので、手放しでRAWデータでの撮影がベストとは言っていられなくなります。ファイル容量の肥大化傾向は、連続撮影可能枚数にも直結しそうな部分なので、RAWデータよりはファイル容量を少なくできるC-RAWで撮影してみました。撮影環境にもよりますが、概ね”EOS 7D Mark II”のRAWデータと同じぐらいのファイル容量でした。ま、実際のところ、RAWとC-RAWどちらで撮った写真なのか見分けがつかないので、連続撮影時にはC-RAWで良いかなあと思っています。加えて、C-RAWであれば、連続撮影可能枚数が約39枚になるそうなので、戦闘機の撮影にも効果はありそうです。
余談ですが、ソニーのミラーレスが誇る約6100万画素や約4240万画素といった超高画質なスペックに関しても、キャノン機以上に写真管理に苦慮する場面があるのでは?と思ったりしています。
< バッテリーの保ち>
“EOS 90D”のバッテリーパックは、”EOS 7D Mark II”や”EOS R”と同じLP-E6N/LP-E6なので、新しく別のバッテリーパックを買う必要がありません。そもそも、カメラのバッテリーパックはどれも高額なので、とても助かります。
気になるのは、1個のバッテリーパックで、どのくらい撮影を継続できるかですよね。カタログ的には、常温でのファインダー撮影で約1,860枚だそうです。実際、”Miramar Air Show“の会場で撮影してみた結果、余裕で丸1日の撮影が可能でした。つまり、カタログスペックと同等またはそれ以上でした。これまで愛用してきた”EOS 7D Mark II”の場合、同じ条件で約670枚 (カタログスペック)です。”EOS 7D Mark II”を海外のエアショーで丸1日使う場合、”バッテリーグリップ BG-E16“を装着して、バッテリーパックを2個収納していましたので、バッテリーの保ちに関しては圧倒的に”EOS 90D”が優位です。しかも、バッテリーグリップを装着しないことで、軽量化を実現できるので、その点においても優位だと思います。
<まとめ >
1ヶ月ほど使ってみて、いろいろと気になる点はあったものの、コストパフォマンスを考えると、お値段以上に使えるカメラであることは間違いないと思っています。まさに、ハイアマチュアに近いバランス感の良いミドルクラスの一眼レフカメラですね。個人的には、ファインダー上の水準器に関する改良が加われば、”EOS 7D Mark II”の良きパートナーになるはずだと思っています。また、実際に”EOS 90D”を使ってみて思ったことは、キャノンさんの財政事情が許せば、”EOS 7D Mark II”と”EOS 5D Mark IV”辺りを見据えた後継機種を是非リリースしてほしいなあ、と思っています。
p.s> 2019年10月30日追記。
先日、沖縄で撮影した順光時の写真をチェックしてみると、”EOS 7D Mark II”と比べて、明らかに”EOS 90D”の方が解像度の高い綺麗な写真が撮れることを確認できました。C-RAWで撮影した写真をJPEG化しています。流石、約3250万画素は綺麗!と思える写真だと思います。”F-15J“の剥がれた塗装なども鮮明に記録できています。(小さな写真では素晴らしさをお伝えできていないとは思いますが…)
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